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医療費控除の仕組みと医療用ウィッグが控除対象にならない理由

投稿日:2017年7月5日 更新日:

円形脱毛症や抗がん剤の投与などで髪の毛が抜けていくのは女性にとって大きな精神的苦痛を伴うものです。
その苦痛を和らげる手段として医療用ウィッグがあります。
着用すると脱毛した部分を隠せますし、しかも、現代では作りが精巧で一見しただけではウィッグだと分からないものが増えてきました。
ただ問題は値段です。
安いものであれば数千円の品も存在しますが、それなりに作りがしっかりとしたものを求めるのであれば、数万円から場合によっては数十万円もかかるケースもあります。
「それだけ高額なら医療費控除が使えるのでは?」と思うかもしれませんが、残念ながら2017年時点で医療用ウィッグは医療費控除の対象外です。
その理由を医療費控除の仕組みについて触れながら説明していきます。

医療費控除の仕組み

そもそも医療費控除とはどのような制度かというと、年間の医療費が一定の額を超えたときに自分や家族にかかる負担を軽くするためにその一部を税金から控除するというものです。
医療費を支払うときに安くなるのではなく、1度全額を支払ってから税金の減額という形で負担軽減が行われるのが特徴です。
その申告は確定申告時に行い、それを忘れると、もちろん税金の減額はできなくなってしまいます。
医療控除の対象となるのは、自分や扶養家族に対する医療費負担額が年間10万円(年間所得額が200万円未満の人は所得額の5%)を超えた場合です。
ただし、保険金などで補てんされている分に関しては負担額とはみなされません。
なお、医療費控除の上限は年間200万円であり、この額を超えた分に関しては控除の対象にはならないので注意が必要です。
例えば、年間所得が400万円で年間医療費が40万円、その内10万円が保険金から補てんされていたとします。
すると、医療費控除の対象になるのは40万円から保険金10万円と控除対象外の10万円を引いた20万円です。
そして、年間所得400万円のときの税率が20%だとすると20万円×20%で税金が4万円減額されることになります。
以上が医療費控除の大まかな仕組みです。

国税庁:https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1120.htm

医療費控除の対象

医療控除を考える際に重要なのは、控除の対象になるのは治療のために必要な費用だという点です。
したがって、診察費用や検査費用、薬代などは当然控除の対象になります。
義手や義足、松葉杖などの購入費やリハビリのための費用も治療に必要だと認められれば問題ありません。
意外なところでは病院を訪れるために支払った公共交通機関の交通費や入院中に出された病院の食事代も控除対象です。
その他には、不妊症の治療費、母体保護法に基づいて行われる中絶、子どもの歯の矯正なども対象例として挙げられます。
一方、予防注射や病気予防のための健康食品購入といった予防行為は医療費控除の対象外です。
メガネやコンタクトレンズを購入するための眼科検診や美容のための歯科矯正なども治療行為とは認められません。
また、病院への移動に必要だったとしても公共の交通機関ではなく、自分の車を使った場合、そのガソリン代などは対象外です。
他にも、対象外の例としては、入院中に購入した日用品、食事療法のための食品購入費用などがあります。
しかし、中にはケースバイケースで扱いが異なるものもあるので注意が必要です。
例えば、健康診断や人間ドッグなどは治療行為ではありませんが、その結果、病気が見つかって治療に移行した場合は控除の対象になります。
タクシー代についても緊急事態で公共交通機関を利用する余裕がなかった場合は控除対象として認められます。

医療用ウィッグの購入に保険は適用されるの?

治療のための必需品とは認められていない医療用ウィッグ

医療用ウィッグの代表的な使用例といえば、抗がん剤による治療の副作用による脱毛が挙げられます。
抗がん剤はがん細胞だけでなく、正常な細胞にも作用するため、長期間使用すると次第に細胞分裂の早い髪の毛が抜け落ちてくるのです。
それが嫌でなかなか治療に踏み切れない女性もいます。
しかし、精巧な医療用ウィッグを装着すれば、見た目にも治療前と比べて違和感のない髪を再現することが可能です。
これは、女性にとっては精神的支えになる心強い存在です。
また、円形脱毛症などで髪の毛の脱落が目立つときも同じような利用方法が考えられます。
医療用ウィッグは患者が治療に向き合うために必要なアイテムだといえるでしょう。
それでも、医療費控除の対象として認められないのは、医療用ウィッグががんや円形脱毛症などの治療に直接関与しているわけではないからです。
例えば、入院中に何も食べないわけにはいきませんから病院で出される食事は控除対象として認められていますし、病院までたどり着かないことには治療が受けられないので交通費も公共交通機関に限っては控除の対象となっています。
ところが、医療用ウィッグは別にそれがなくても治療を受けるのには何の支障もないので控除の対象としては認められないというわけです。
長期の治療を行う上で精神的苦痛の緩和は不可欠ですが、医療費控除の中には「美容目的の使用は対象外」という注意書きがあり、医療用ウィッグもそれに当たるとされています。

医療用ウィッグが医療費控除の対象として認められる事例

医療用ウィッグにかかった費用は原則として医療費控除の対象とはなりません。
しかし、例外はあります。
医師が治療に医療用ウィッグが必要だと判断し、それを装着するように指示した場合です。
例えば、脳の手術のために、頭蓋骨の一部を切り取り、手術後もしばらく脳が露出した状態を維持しなければならないとします。
当然、そのままでは危険なので医師は頭を保護するための鉄板付ウィッグを装着するように指示します。
こうしたケースでは医療費控除は認められます。
ただ、これはあくまでも特殊な例であり、医師が「医療用ウィッグを用意するように」といったとしても、それをもって医療費控除の対象として税務署が認められるとは限りません。
あくまでも医療行為のために本当に必要だったかどうかが主なポイントとなるのです。

医療費控除以外で医療用ウィッグの費用を軽減する方法

医療用ウィッグを購入しても現実には医療費控除の対象にはならないケースがほとんどです。
しかし、医療用ウィッグは高額な商品だけにできることなら負担を軽減したいものです。
そこで、医療費控除以外の制度の利用を検討してみてはいかがでしょうか。
例えば、民間のがん保険です。
がん保険にはさまざまな種類がありますが、その中には医療用ウィッグの費用負担をしてくれるものも存在します。
保険加入を検討する際にはそういった点も確認しておきましょう。
ちなみに、海外ではかつらの購入費用を全負担してくれる保険が以前からありましたが、近年、日本でもようやくこうした需要に対するサービスの普及が広まってきた感があります。
また医療用ウィッグの購入に対して補助金を出してくれる自治体も現れ始めました。
その先駆けとなったのが山形県で、2014年度より抗がん剤治療に伴い医療用ウィッグを購入すると上限1万円の補助費用を出す制度が始まりました。
また、滋賀県の伊万里市でも2014年7月からがん患者が医療用ウィッグを購入する場合、上限1万5千円まで補助する制度を開始しています。
さらに、岩手県の北上市や秋田県の能代市では上限3万円までの補助金が受けられるようになりました。
その後も、医療用ウィッグの購入に対して補助金を出す自治体は増え続け、全国的な広がりを見せています。
そこで、医療用ウィッグの購入を検討している人は、地元の自治体でもこのような補助金制度を行っていないかを確認することをおすすめします。
また、行っていなかったとしても、今後導入されていく可能性はあります。
補助金に関する情報は定期的にチェックしておいた方がよいでしょう。

医療用ウィッグの購入に保険は適用されるの?

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