がん患者が闘病していく上で大きな悩みとなるのが、抗がん剤の副作用にともなう脱毛です。
抗がん剤の投与にともない、髪の毛が抜け落ちていってしまうのは大変な精神的苦痛にもなります。
医療用ウィッグ(かつら)は、そんな脱毛による容姿の変化をカバーしてくれる救世主といえます。
値段が高いものが多い傾向なだけに、選び方のコツを押さえて自分に似合うすてきなウィッグを見つけましょう。
目次
値段と使用感から医療用ウィッグを選ぶ
医療用ウィッグは文字通り病気の方が使用することを前提に作られているため、おしゃれを目的としたファッションウィッグと比べるとより高機能なものとなっています。
反面、こだわって作られているために高価なイメージがあることでしょう。
実際には、種類や素材によって価格が異なっています。
材質では人毛、人工毛、ミックス毛の3種類があります。
ひとつずつ見ていきましょう。
人毛
人毛は一番高価ですが、カットやパーマはもちろん、ヘアアイロンやドライヤーでのアレンジも可能です。
洗髪でスタイルがリセットされるのでセットには毎回手間がかかりますが、自分の毛と変わらず自然な髪の毛として使用できます。
人工毛
人工毛は比較的安価で、スタイルも保持されやすいです。
欠点は、素材によって独特のツヤやテカリがあり、不自然に見える場合もあることです。
また、耐熱性の低い素材だとお湯やドライヤー、ヘアアイロンによって縮んだり変形することもあるため、注意が必要です。
ミックス毛
ミックス毛は人毛と人工毛を混ぜたもので、両方の中間くらいの価格で購入することができます。
人毛と人工毛それぞれのいい点を取り入れられるため、手入れも楽な傾向です。
洗髪をしてもスタイルが保持され、アレンジもしやすくなっています。
毛の種類 | 価格 | 見た目 | アレンジ | 手入れ |
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人毛 | ![]() |
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人工毛 | ![]() |
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ミックス毛 | ![]() |
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種類では、既製品、セミオーダー、フルオーダーから選べます。
既製品
既製品は価格が安くカタログをみて選べるのでお手ごろですが、それだけにぴったりのサイズがなかったり長さや毛量の調節をしたりはできません。
セミオーダー
それに対してセミオーダーは、大半ができあがっているウィッグの中から自分の好みに合ったものを選んだ上で好きなようにカットしてもらえます。
もちろん、自分の頭に合わせてのサイズの調整も行います。
フルオーダー
フルオーダーはウィッグのトップクラスとも言えるものです。
スタイルや毛質、毛量、色合いなど1から好みに応じてオーダーできる点は魅力的といえます。
ただし仕上がりまでにかかる時間も1カ月強と長めで、お値段も30万~80万円とかなり高額な傾向です。
制作方法 | 価格 | 入手難易度 | 自由度 |
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既製品 | ![]() |
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セミオーダー | ![]() |
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フルオーダー | ![]() |
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医療用ウィッグは使用期間が長いからこそ試着を
ファッションでつけるウィッグとちがって、医療用ウィッグを使用する期間はおよそ1年半から2年ほどが多い傾向です。
それだけの期間に脱毛や発毛という変化にも対応する必要があります。
だからこそ、スタイルや価格だけではなくつけ心地は重視しておきたいポイントです。
販売店や専門店など試着できる先で体験した上で購入しましょう。
通信販売でも「ライツフォル」のように無料試着サービスを行っているメーカーは多数あるので、実物を手に取って確認することが可能です。
店頭で試着するときには、できれば普段の自分を知っている家族や友人に付き添ってもらうと確実です。
つけていても自然に見えるかどうかを、自分では見えにくい生え際やもみあげの部分を重点的にチェックしてもらいます。
「チクチクしないか」「ムレないか」「きつくないか」など自分でも着用感を納得いくまで試しましょう。
店では病状の進行に合わせたサイズ調整やアフターフォローも行ってくれるかの確認も忘れずにしたいところです。
専門店では治療中の頭皮のケアについてのアドバイスを行うところもあります。美容室を併設し生え始めた髪のお手入れを行ってくれるなどかゆいところに手の届くような気配りも、専門店ならではといえます。
治療に励むための良いパートナーとなってくれるお店を選びましょう。
医療用ウィッグを準備するタイミング
医療用ウィッグの準備ははやめに取り掛かりましょう。
医療用ウィッグの選び方について解説してきましたが、購入するのはどのタイミングがベストなのでしょうか。
ずばり、がん治療の過程で抗がん剤を使うことが決まり、脱毛の可能性が高いことが判明した時点です。
心理的なショックで、医療用ウィッグにまでは気が回らないかもしれません。
たしかに、抗がん剤治療が終われば髪は再度生えてきますが、脱毛というストレスは思った以上に大きいものです。
髪が抜け落ちる前に準備しておけば、その時をむかえても心に余裕をもつことができます。
たとえウィッグでも、髪があるという安心感から治療にも前向きに取り組むことができますし、普段通りの生活を過ごす手助けとなってくれるでしょう。
医療用ウィッグを選ぶ際に最初に決めることは、髪型です。
「現在のヘアスタイルと同じものにするのか」「イメージを変えるのか」など、自分のライフスタイルや好みを考慮しながら決めましょう。
脱毛が始まってからでは普段のイメージがぼやけてしまい、決めにくくなる可能性があります。
治療の過程で毛髪の状態が変化していくので、その都度医療用ウィッグのメンテナンス(お手入れ)も必要です。
私たちが毎日の入浴で頭を洗うように、医療用ウィッグも定期的にシャンプーやトリートメントをしなければいけません。
髪がからまったりしないように、ブラッシングも必須です。
また、脱毛がすすむにつれて髪の量が減り、その分頭のサイズが小さくなるので、その調整も必要となります。
ゴムタイプのアジャスターであれば頭の状態に合わせた調整が簡単ですが、ベルトタイプのアジャスターの場合は自分で調整することになります。
うまくフィットしない場合は、購入したお店でサイズ調整をお願いするといいでしょう。
抗がん剤治療が終了したら、徐々に自分の髪が生えてきます。
元通りに生えそろうまでには個人差がありますが、半年から1年程度かかるとみておきましょう。
それまでの期間は、部分ウィッグなども活用していくと自然にカバーできます。
医療用ウィッグの購入費用はどうする?
気に入った医療用ウィッグを見つけたとしても、やはり気になるのは価格です。医療用ウィッグは高機能でありサイズ調整などのアフターフォローがともなうので、どうしても価格が高くなりがちです。
1万円ほどの激安な製品もありますが、治療中の敏感な地肌に直接つけるものなので長期的な視点ではあまりおすすめはできません。
既製品は1万~10万円、セミオーダーでは5万~30万円とその幅は広くなっています。
機能性と値段の兼ね合いで良いものを探しましょう。
医療用ウィッグは「医療用」と銘打っていますが、2018年時点では確定申告時における医療費控除の対象とはなりません。
治療に必要な薬や通院のための交通費は対象となるのですが、医療用ウィッグは美容目的とみなされるために該当していません。
がん保険に加入していれば「がん」と診断されることで一時金が受け取れるケースがあります。
医療用ウィッグの購入に充てられるので女性であれば、がん保険への加入はしておいた方が安心です。
また、一部の自治体ではありますが医療用ウィッグへの補助金や助成金の制度を設けているところがあります。
山形県の山形市、酒田市など、自治体のホームページに詳細は記載してあります。
該当の地域に住んでいるのならば申請しましょう。
お住いの自治体で助成制度がなくても、医療用ウィッグのメーカーが行う割引制度もあります。
医療用ウィッグの大手メーカーでは抗がん剤治療を行う人を対象に自社製品の割引を実施しています。
メーカーによって詳細は異なりますが、医師の診断書があれば適用となる傾向です。
抗がん剤治療自体も高額な医療費が毎月かかってきます。
がん治療の際は医療用ウィッグにかかる費用も十分に考慮して、利用できる制度は上手に活用して不安のない闘病生活を送りましょう。
医療用ウィッグは市販のウィッグと何がちがう?
そもそも医療用と市販の製品でウィッグに厳格な差異はありません。
言ってしまえば、市販されているおしゃれ用のウィッグでも構わないわけです。
しかし、がん患者が医療用ウィッグを選択しているのには理由があります。
冒頭でも少し触れましたが、医療用ウィッグの特徴として挙げられるのは、長い治療期間中にストレスなくつけ続けられる精巧なつくりという点です。
自毛と変わらない自然な見た目となっているため、他人からの目線があまり気になりません。
また、サイズ調整ができるということも市販の既製品との違いです。
抗がん剤を使った治療を始めると多くのケースでは脱毛し、治療が終了してから半年程度で発毛してくるのが一般的です。
この過程で頭のサイズは1~2cmも変化してしまいます。
サイズ調整ができなければ、すき間ができて不自然に見えてしまいます。
医療用ウィッグであれば適宜調整が可能なので、治療はじめから終わりまでどの時期でも頭にフィットさせることができます。
また、つけ心地にも工夫がなされています。
直接地肌に触れるメッシュ部分が通気性のいい素材でつくられ、熱や汗をためないように配慮されているのです。
肌にもやさしく、炎症を引き起こさない安全な素材が採用されていることが多いです。
植えられている毛も丁寧に処理されているため、頭皮をチクチクと刺激することもありません。
日常的につけるため、軽さも考えられています。重すぎると着用に疲れてしまうためです。
病気と闘っているからこそ、ストレスなく快適に過ごしたいものです。
医療用ウィッグはそんな希望を叶えられるよう、たくさんの配慮が施されているのです。
関連記事:医療用ウィッグと普通のウィッグの違い